食品交換表:ICMRおよびADAシステムの臨床ガイド
食品交換とは、同じ食品群の他のどの分量ともほぼ同じ量の炭水化物、タンパク質、脂質、エネルギーを含むように計量された食品の分量です。食品は穀類、乳製品、果物、脂質などの交換群に分類されており、同じ群の中であれば、食事の栄養素量を大きく変えることなく、ある分量を別の分量に置き換えることができます。食品交換表は医学的栄養療法、特に糖尿病診療において、エネルギーと主要栄養素の処方を、グラム数ではなく分量に基づく計画に変換するために用いられます。本ガイドの交換は、GlycoMatrix Proのインドのルールセット(ICMR/NINのガイダンスを基に調整)とADAシステムに基づき、それぞれ独自の値を持つもので、日本糖尿病学会の「食品交換表」で用いられる「単位」とは異なります。
交換システムの仕組み
各交換群には、交換あたりの基準値が定められています。これは、一つの分量から得られると想定される炭水化物、タンパク質、脂質のグラム数です。ある食品の交換分量とは、その基準値に相当する食品の量であるため、食品によって分量は異なりますが、栄養素量はほぼ一定に保たれます。例えば、本サイトで使用しているADAの値では、穀類交換一つ分は炭水化物15g、タンパク質3g、脂質1gであり、どの穀物食品から摂る場合でも同じです。
食事計画は、各食事で各群から何交換を摂るかという形で記述します。一日の合計は、各群の交換数に交換あたりの値を掛けたものを、すべての群について足し合わせて求めます。値は群ごとに固定されているため、患者は計画を計算し直すことなく群内の食品を選ぶことができ、臨床医は炭水化物、タンパク質、脂質を一日の中でどう配分するかを管理できます。
置き換えは群の中で行い、群をまたいでは行いません。果物交換と穀類交換は、ある交換表では同じ量の炭水化物を含むことがありますが、タンパク質、脂質、食物繊維、微量栄養素が異なるため、交換システムでは別々の群として扱われます。
10の交換群:インドとADAの値
下表は、GlycoMatrix Proで使用している二つのルールセット、すなわちGlycoMatrix Proのインドのルールセット(ICMR/NINのガイダンスを基に調整)と「米国/国際基準(ADA/USDA)」ルールセットにおける、十の交換群の交換あたりの値を示しています。インドの値はGlycoMatrix Pro独自の調整値であり、ICMRの公式な表を再現したものではありません。炭水化物、タンパク質、脂質は交換あたりのグラム数、エネルギーは交換あたりのキロカロリーで示しています。
| 交換群 | インド(ICMR/NINを基に調整) | ADA / USDA | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 炭水化物(g) | タンパク質(g) | 脂質(g) | エネルギー(kcal) | 炭水化物(g) | タンパク質(g) | 脂質(g) | エネルギー(kcal) | |
| 穀類交換 | 20 | 2 | 0 | 88 | 15 | 3 | 1 | 80 |
| 豆類交換 | 15 | 7 | 1 | 97 | 15 | 7 | 2 | 100 |
| 乳製品交換 | 5 | 3 | 4 | 68 | 12 | 8 | 3 | 110 |
| 卵交換 | 0 | 6 | 5 | 66 | 0 | 7 | 5 | 75 |
| 赤身タンパク質 | 0 | 7 | 3 | 55 | 0 | 7 | 2 | 45 |
| 高脂肪タンパク質 | 0 | 7 | 8 | 100 | 0 | 7 | 8 | 100 |
| 非でんぷん質野菜 | 4 | 1 | 0 | 20 | 5 | 2 | 0 | 25 |
| 果物交換 | 10 | 0 | 0 | 40 | 15 | 0 | 0 | 60 |
| 固形脂肪 | 0 | 0 | 5 | 45 | 0 | 0 | 5 | 45 |
| 液体油 | 0 | 0 | 5 | 45 | 0 | 0 | 5 | 45 |
エネルギーの数値は、各ルールセットに記載されている交換あたりの値です。公表されている食品交換表では交換あたりのエネルギー値を慣例的に丸めているため、炭水化物とタンパク質を4kcal/g、脂質を9kcal/gとして計算した値とわずかな差が生じるのは想定の範囲内です。例えば、ADAの豆類交換は100kcalと記載されていますが、グラム数から計算すると15 × 4 + 7 × 4 + 2 × 9 = 106kcalになります。以下の計算例では4/4/9を用いてグラム数からエネルギーを計算しており、これはGlycoMatrix Proが計画の合計を求める方法と同じです。
計算例:1,500kcalのプランを交換で表す
この例では、エネルギーの45%を炭水化物、20%をタンパク質、35%を脂質から摂る1,500kcalの目標を、四つの食事にわたるADAの交換に換算します。この配分は、GlycoMatrix ProのADA糖尿病プリセットが適用するものです。ここでは計算の過程を示すために用いており、特定の個人に対する推奨ではありません。
ステップ1:エネルギー目標をグラム数に換算する
- 炭水化物:1,500kcal × 45% = 675kcal、675 ÷ 4kcal/g = 168.75g、四捨五入して169g
- タンパク質:1,500kcal × 20% = 300kcal、300 ÷ 4kcal/g = 75g
- 脂質:1,500kcal × 35% = 525kcal、525 ÷ 9kcal/g = 58.3g、四捨五入して58g
ステップ2:乳製品、野菜、果物、豆類の交換数を決める
従来の計算方法では、これらの群が供給する炭水化物を差し引いてから穀類の量を算出する必要があるため、患者の普段の摂取量と食品の好みに基づいて、これらの群を先に決めます。
- 乳製品:2 ×(炭水化物12g、タンパク質8g、脂質3g)= 炭水化物24g、タンパク質16g、脂質6g
- 非でんぷん質野菜:3 ×(5g、2g、0g)= 炭水化物15g、タンパク質6g、脂質0g
- 果物:3 ×(15g、0g、0g)= 炭水化物45g
- 豆類:2 ×(15g、7g、2g)= 炭水化物30g、タンパク質14g、脂質4g
- ここまでの炭水化物:24 + 15 + 45 + 30 = 114g
ステップ3:残りの炭水化物を穀類交換で満たす
- 残りの炭水化物:169 − 114 = 55g
- 55g ÷ 穀類交換あたり15g = 3.7交換、切り捨てて3.5交換
- 穀類:3.5 ×(15g、3g、1g)= 炭水化物52.5g、タンパク質10.5g、脂質3.5g
ステップ4:残りのタンパク質を赤身タンパク質交換で満たす
- ここまでのタンパク質:16 + 6 + 14 + 10.5 = 46.5g
- 残りのタンパク質:75 − 46.5 = 28.5g
- 28.5g ÷ 赤身タンパク質交換あたり7g = 4.1交換、四捨五入して4交換
- 赤身タンパク質:4 ×(0g、7g、2g)= タンパク質28g、脂質8g
ステップ5:残りの脂質を脂質交換で満たす
- ここまでの脂質:6 + 4 + 3.5 + 8 = 21.5g
- 残りの脂質:58 − 21.5 = 36.5g
- 36.5g ÷ 脂質交換あたり5g = 7.3交換、四捨五入して7交換
- 液体油:7 ×(0g、0g、5g)= 脂質35g
ステップ6:合計を目標と照合する
- 炭水化物:24 + 15 + 45 + 30 + 52.5 = 166.5g(目標169g)
- タンパク質:16 + 6 + 14 + 10.5 + 28 = 74.5g(目標75g)
- 脂質:6 + 4 + 3.5 + 8 + 35 = 56.5g(目標58g)
- エネルギー:166.5 × 4 + 74.5 × 4 + 56.5 × 9 = 666 + 298 + 508.5 = 1,472.5kcal、四捨五入して1,473kcal
1,473kcalは目標の1,500kcalの98%です。交換数を半交換刻みで丸めているため、各主要栄養素が目標をわずかに下回りますが、これは想定どおりです。GlycoMatrix Proでは、計画のエネルギーが目標の5%以内であれば目標に一致しているとみなします。
ステップ7:交換を各食事に配分する
次に、一日の交換を朝食、昼食、夕方の間食、夕食に分け、炭水化物が一食に集中せず一日を通して分散されるようにします。食事ごとの値は、上表のADAの交換あたりの値から計算しています。
| 食事 | 交換 | 炭水化物(g) | タンパク質(g) | 脂質(g) | エネルギー(kcal) |
|---|---|---|---|---|---|
| 朝食 | 穀類交換 1 · 乳製品交換 1 · 果物交換 1 · 赤身タンパク質 1 · 液体油 1.5 | 42 | 18 | 13.5 | 362 |
| 昼食 | 穀類交換 1.5 · 豆類交換 1 · 非でんぷん質野菜 1.5 · 赤身タンパク質 1.5 · 液体油 2.5 | 45 | 25 | 19 | 451 |
| 夕方の間食 | 乳製品交換 1 · 果物交換 1 | 27 | 8 | 3 | 167 |
| 夕食 | 穀類交換 1 · 豆類交換 1 · 非でんぷん質野菜 1.5 · 赤身タンパク質 1.5 · 果物交換 1 · 液体油 3 | 52.5 | 23.5 | 21 | 493 |
| 一日の合計 | 166.5 | 74.5 | 56.5 | 1473 | |
各食事の行を合計すると、ステップ6の一日の合計と一致します。実際には、食事間の配分は患者の生活リズムや食欲、また必要に応じて血糖降下薬の服用時刻に合わせて調整します。
ICMRとADA:二つのシステムの違い
GlycoMatrix Proのインドのルールセット(ICMR/NINのガイダンスを基に調整)とADAルールセットは同じ十の群を使用していますが、そのうち七つの群に異なる基準値を割り当てているため、同じ交換数でも栄養素の合計は同じになりません。以下の比較で「インド」とは、GlycoMatrix Proが調整した値を指し、ICMRの公式な表ではありません。
- 穀類:インド 炭水化物20g、タンパク質2g、脂質0g(88kcal);ADA 15g、3g、1g(80kcal)
- 乳製品:インド 炭水化物5g、タンパク質3g、脂質4g(68kcal);ADA 12g、8g、3g(110kcal)
- 果物:インド 炭水化物10g(40kcal);ADA 15g(60kcal)
- 非でんぷん質野菜:インド 炭水化物4g、タンパク質1g(20kcal);ADA 5g、2g(25kcal)
- 卵:インド タンパク質6g、脂質5g(66kcal);ADA 7g、5g(75kcal)
- 豆類:炭水化物とタンパク質は同じ(15g、7g);インド 脂質1g(97kcal)、ADA 脂質2g(100kcal)
- 赤身タンパク質:タンパク質は同じ(7g);インド 脂質3g(55kcal)、ADA 脂質2g(45kcal)
- 高脂肪タンパク質、固形脂肪、液体油の主要栄養素の値は、両ルールセットで同じです
同じ計画をそれぞれのルールセットで計算した場合
計算例の交換パターン(乳製品2交換、野菜3交換、果物3交換、豆類2交換、穀類3.5交換、赤身タンパク質4交換、液体油7交換)にインドのルールセットの値を当てはめると、炭水化物152g、タンパク質58g、脂質57gとなります。これは152 × 4 + 58 × 4 + 57 × 9 = 608 + 232 + 513 = 1,353kcalとなり、ADAの値では1,473kcalです。計画は、その分量の出典である交換表の値で計算しなければならず、一方のシステムの交換を他方のシステムの値で数えることはできません。
主食とその他のルールセット設定
これらの交換表は、異なる主食を中心に構成されています。GlycoMatrix Proが各ルールセットについて表示する分量例では、インドのルールセットの穀類交換と豆類交換にはチャパティ、米、イドリ、ドーサ、ダルが含まれ、ADAの対応する交換にはパン、オートミール、トルティーヤ、レンズ豆、ひよこ豆が含まれます。
GlycoMatrix Proの二つのルールセットは、一日あたりのナトリウム上限も異なり、ADA / USDAでは2,300mg、インドのルールセットでは2,000mgで、高血圧が記録されている場合はどちらも1,500mgになります。また、どちらも飽和脂肪酸が総エネルギーの10%を超えると警告を表示します。
糖尿病の食事計画における食品交換表の使い方
糖尿病診療において、食品交換表は炭水化物の摂取を体系立てるものです。炭水化物を含む群(穀類、豆類、乳製品、果物、非でんぷん質野菜)によって各食事の炭水化物量が決まるため、計画によって炭水化物を日々ほぼ同じ水準に保ち、各食事に分散させることができます。
交換の計算はカーボカウントと密接に関連しています。上記のADAの値では、穀類交換一つと果物交換一つはそれぞれ炭水化物15gを含み、これはカーボカウントで「カーボチョイス」として扱われる量と同じです。
インスリンまたはインスリン分泌促進薬を使用している人では、用量が摂取量に合わせて調整されるため、各食事の炭水化物量を一定に保つことが重要です。交換に基づく計画は、各群内での食品の選択を可能にしながら、この一貫性を保ちやすくします。
タンパク質と脂質の交換は、エネルギーとタンパク質の必要量を満たし、飽和脂肪酸を上限内に抑えるために、炭水化物と併せて計画します。どちらのルールセットでも、固形脂肪より液体油を、高脂肪タンパク質より赤身タンパク質を選ぶことで、交換数を変えずに飽和脂肪酸を減らすことができます。
計画は、血糖値のパターン、HbA1c、体重変化などのモニタリング結果と、計画を実践した患者の経験に照らして見直し、それに応じて交換の配分を調整します。
限界
- 交換は近似値です。群内の食品は基準値の前後でばらつきがあり、交換あたりの数値は平均値であって、個々の食品の分析値ではありません。
- このシステムが扱うのは主要栄養素とエネルギーのみです。交換あたりの炭水化物量が同じ二つの食品でも、血糖反応、食物繊維、ナトリウム、微量栄養素の含有量が異なる場合があります。
- 精度は分量の測り方に左右されます。カップやカトリ(インドの小鉢)などの家庭用の計量器具は大きさがまちまちで、調理方法によって食品の重量と脂質量の両方が変わります。
- 混合料理や加工食品は構成要素の交換に分解する必要があり、その分だけ推定誤差が加わります。
- 上記のとおり基準値は交換システムによって異なるため、計画はその計算に用いた交換表でのみ有効です。
- 交換に基づく計画は、個別の評価に代わるものではありません。エネルギーとタンパク質の必要量、薬物療法、腎機能、妊娠、体重目標、文化的な食習慣については、計画を用いる前に、管理栄養士などの資格を持つ臨床医が評価する必要があります。
参考文献
交換に基づく食事計画、食事指針、食品成分データの一次資料(英語):
- ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad. ICMR–NIN. インド人のための食事指針およびインド食品成分表の発行元です。
- American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes. 栄養療法を含む、毎年改訂される臨床診療の推奨事項です。
- American Diabetes Association and Academy of Nutrition and Dietetics. Choose Your Foods: Food Lists for Diabetes. ADA交換システムの出典です。
- American Diabetes Association. Carb Counting and Diabetes. カーボカウントに関する患者向けの解説です。
- Academy of Nutrition and Dietetics. Diabetes. 米国の栄養士の専門職団体による、糖尿病の栄養ガイダンスです。
- U.S. Department of Agriculture, Agricultural Research Service. FoodData Central. 米国の食品成分データベースです。
- Anuvaad Solutions. Indian Nutrient Databank (INDB). インドで一般的に食べられている食品やレシピの、オープンアクセスの栄養データです。